忘れられない人

忘れられない人

夫と結婚する以前に付き合っていた元彼。私は彼のことが大好きでした。
学生時代からの知り合いだった彼を私はずっと心のどこかで思い続けていて、距離が縮まったときは本当にうれしく、一緒に過ごす時間はとても幸せなものでした。

どこかで彼にとって自分が一番ではないとうすうす感じてはいたものの、離れたくない気持ちのほうが大きかった私はそれでもいいと彼のそばに居続けることを選びました。
しかしそんな関係もずっとは続かず、まして結婚など夢見ても虚しさを感じることが増え、それに相反して自分自身も「私だけを見てほしい」という気持ちがどんどん強くなっていって辛くなってしまい、泣く泣く別れを決めました。

その後出会った彼氏が今の夫。喧嘩もありましたが交際を経て夫のプロポーズで結婚しました。
元彼はしてくれなかった特別扱いが私にとってうれしく、「愛されている」実感が持てたのが、私がプロポーズを受けた大きな理由でした。
しかし、結婚生活を続けているうちに夫との些細な性格や嗜好のずれが気になるようになってきて、そのたびに元彼を思い出す自分に気づきました。

元彼は私の理想を多く備えた人だったので、元彼にとっての一番にはなれなかったものの一緒にいて私はとても居心地がよかったのです。

元彼の考え方や繊細さ、豊富なボキャブラリー、食の好みや些細な癖…。それぞれが私の心の琴線に触れました。
一方、夫に対して私はそれらに関して強い親近感を覚えることもなく、むしろ「コレジャナイ感」が増して居心地の悪さを感じてしまいます。

夫として私を妻として求めてくれるという点では夫が一番なのですが、「私もあなたが一番だよ」と夫に言うたびに実は元彼を思い出していることに罪悪感を感じてしまいます。夫との雰囲気が悪くなった時や夫にイライラしたときはつい元彼を思い出して比べて元彼を恋しがっているのですから。

思えば夫が私を求めてくれたことが結婚の後押しになったというだけで、私自身が夫を心から頼り必要としているのではないのかもしれません。自分自身少し人とずれた部分がある実感はあるのですが、正直夫に対しては「この人じゃなきゃいや」とまでの強い気持ちはないように思います。

夫が誰であっても、私が元彼のことを吹っ切って過去と決別しないかぎり、この気持ちは変わらないのでしょう。

今では少し志向を変えて、夫に対して足りないと思う部分を感じたときに元彼のことを思い出して、「あの頃あの人は至らなかった自分にこう接してくれた、私もあの人を見習って寛大になろう」と元彼の理想的な部分を見習ってふるまうように心がけるようにしています。そうすることによって元彼を思い出す罪悪感も少し軽くなります。

元彼と別れてもう何年もたちますが、今のところ元彼を超える存在は私の前に現れませんし、それだけ元彼が私に与えた影響力は大きく、今の私を構成している部分の多くが元彼の存在を経て形作られたものだと思うと、それはいい学びであったと思えるし自分にとってプラスになっているんだと嬉しくも思えます。

結婚して妻・母になった今元彼との未来はなくなりましたが、これからも私は元彼を忘れずに心の中で思い続けるのだと思います。

もしかしたら別の恋だって生まれるかもしれません。
退屈な主婦の毎日。主婦だって恋したいなぁと思うことはたくさんありますから。